注目のポイント
2026年7月、Meta広告の「オーディエンス」セクションのUIが大幅に刷新され、カスタムオーディエンスがラベル別にグループ化されて表示されるようになりました。顧客(Customer)カテゴリに6種類、エンゲージメントの高いオーディエンスに6種類、計12のサブラベルが用意されており、ラベル付きオーディエンスはバリュールールと連携して-90%〜+1,000%の入札調整が可能です。ただし、バリュールール使用時はtCPA(コンバージョン単価の目標)との併用ができないなど、入札戦略に制約があります。本記事では全ラベルの比較表、制約事項、モニタリングとターゲティングの違い、ASCでのベストプラクティスまで、海外ソースを交えて解説します。
目次
オーディエンスラベルUI刷新の背景|なぜ今このタイミングなのか?
参照元:Meta Redesigns Audiences Around Labels – Jon Loomer Digital(2026年7月16日)
2026年7月、Metaは広告マネージャの「オーディエンス」セクションを全面リニューアルしました。従来はカスタムオーディエンス・類似オーディエンス・保存済みのオーディエンスが平坦に並んでいただけでしたが、新UIではラベル別のグループ表示に切り替わっています。

このUI刷新の背景には、2026年4月に導入された「バリュールールのオーディエンス拡張」があります。バリュールールをオーディエンスに適用するには、カスタムオーディエンスにラベルを付与する必要がありますが、Jon Loomer氏が指摘するように、従来のUIではラベル付与のオプションがカスタムオーディエンスの作成・編集画面の最下部に埋もれており、ほとんどの広告主が気づかない状態でした。
ラベルの利用率が低ければバリュールールも使われない——この問題を解決するために、MetaはオーディエンスUIをラベル中心の設計に刷新したわけです。
新UIでは以下の5つのグループでオーディエンスが整理されます。
・顧客(Customers):購入済みユーザーのカスタムオーディエンス
・エンゲージメントの高いオーディエンス(Engaged Audiences):興味関心はあるがまだ未コンバージョンの潜在顧客
・ラベルのないオーディエンス(Unlabeled Audiences):ラベル未付与のカスタムオーディエンス
・類似オーディエンス(Lookalikes):類似オーディエンス(ラベル付与不可)
・保存済みのオーディエンス(Saved Audiences):保存済みのオーディエンス(ラベル付与不可)
なお、当ブログでは2026年5月にバリュールールへのオーディエンスラベル追加について先行記事を公開しています。今回はそこから2ヶ月経ち、UIが刷新された現在の全体像を改めて整理します。
オーディエンスラベル全12種類の比較表
参照元:Meta Value Rules for Audiences Explained – Jon Loomer Digital(2026年4月21日)
参照元:About Audience Labels for Custom Audiences – Meta Business Help
以下が2026年7月時点で利用可能なオーディエンスラベルの一覧です。1つのカスタムオーディエンスに付与できるラベルは1つだけです。
顧客(Customers)カテゴリ
| ラベル名(日本語) | ラベル名(英語) | 説明 | ユースケース例 |
|---|---|---|---|
| 高価値 | High Value | LTVが高い、リピート率が高いなど、ビジネスにとって価値の高い顧客 | 上位20%のLTV顧客リスト |
| 低価値 | Low Value | 1回限りの購入、返品率が高いなど、価値の低い顧客 | ディスカウント時のみ購入する顧客 |
| 最近の購入者 | Recent Purchaser | 直近で購入・コンバージョンした顧客 | 過去30日以内の購入者リスト |
| リスクあり(離反リスク) | At Risk | 離脱やチャーンの兆候を示している顧客 | 60日以上未購入のリピーター |
| エンゲージメント低下(休眠) | Disengaged | 最近購入がない、またはサブスクを解約した顧客 | 180日以上未購入者 |
| 一般顧客 | General Customer | 上記のいずれにも該当しない、購入済みの顧客全般 | 全購入者リスト |
エンゲージメントの高いオーディエンス(Engaged Audiences)カテゴリ
| ラベル名(日本語) | ラベル名(英語) | 説明 | ユースケース例 |
|---|---|---|---|
| 適格リード | Qualified Lead | 自社の基準を満たしたリード | フォーム回答後に条件を満たした見込み客 |
| 不適格リード | Disqualified Lead | 自社の基準を満たさなかったリード | 審査落ちしたリード |
| アプリユーザー | App User | アプリをインストールしたユーザー | アプリインストール済みユーザーリスト |
| トライアルユーザー | Trial User | 試用期間を開始したユーザー | 無料トライアル登録者 |
| カゴ落ちした人 | Cart Abandoner | カートに商品を追加したが購入しなかったユーザー | カート放棄者リスト |
| その他のアクションを実行したユーザー | Other Engaged User | 興味を示したが購入には至らなかったユーザー | 資料請求のみのユーザー |
その他のカテゴリ
| カテゴリ | 内容 | ラベル付与 |
|---|---|---|
| その他のオーディエンス | 上記3カテゴリに該当しないユーザー。サブラベルとして「ペルソナ」「その他1〜3」が用意されている | 可能 |
| 新規オーディエンス | カスタムオーディエンスに含まれていないユーザー。自動判定のためラベル付与不要 | 不要(自動) |
| ラベルのないオーディエンス | カスタムオーディエンスだがラベル未付与のもの | 可能(新UIで一括付与可) |
| 類似オーディエンス | 類似オーディエンス | 不可 |
| 保存済みのオーディエンス | 保存済みのオーディエンス | 不可 |
バリュールールとの連携|ラベル別の入札調整の仕組み
参照元:Meta Ads Value Rules: How They Work – TheOptimizer(2026年6月2日)
参照元:Meta Value Rules for Audiences: 2026 Practitioner Guide – Alex Neiman(2026年5月4日)
オーディエンスラベルの最大の意義は「整理・分類」だけではありません。ラベルを付与したカスタムオーディエンスに対して、バリュールールで-90%〜+1,000%の入札倍率を設定できる点にあります。
バリュールールの基本的な仕組み
バリュールールは入札倍率(Bid Multiplier)です。Metaのオークションでは「Total Value = 広告主の入札 × 推定アクション率 + 広告品質 + ユーザー価値」で勝敗が決まります。バリュールールはこの「広告主の入札」部分を特定セグメントに対して調整するものです。
例えば、ベース入札が1,000円の場合:
・高価値顧客に+50%のルールを設定 → その層には1,500円で入札
・不適格リードに-40%のルールを設定 → その層には600円で入札
対応するオーディエンスタイプの制約
2026年7月時点で、バリュールールのオーディエンス対応は顧客リスト(CRMアップロード)のカスタムオーディエンスのみです。WebサイトCAへの拡張はJon Loomer氏の記事で言及されていますが、時期は未定です。
・顧客リスト(Customer List)CA → 対応済み
・WebサイトCA → 今後対応予定(時期未定)
・類似オーディエンス → 非対応
・動画・ページ・リード広告CA → 非対応(対応予定の言及なし)
ルールの優先順位に注意
複数のルールに該当するユーザーがいる場合、最初にマッチしたルールだけが適用されます。つまりルールの並び順が重要です。最も具体的な条件を上に、汎用的な条件を下に配置してください。
入札戦略の制約|tCPA(コンバージョン単価の目標)との併用不可
参照元:Meta Value Rules: Bid More for Your Best Customers – 1ClickReport(2025年11月20日)
バリュールールを使ううえで最も重要な制約が入札戦略との互換性です。
使える入札戦略と使えない入札戦略
| 入札戦略 | バリュールールとの併用 | 補足 |
|---|---|---|
| コンバージョン数の最大化(Highest Volume) | 可能 | 制約なしで入札。バリュールールが乗算されて高価値セグメントにより多く配信 |
| コンバージョン単価の上限(Cost Cap) | 可能 | 上限CPA × バリュールールの倍率で実質的な上限が変動する。例:上限1,000円 + 50%ルール → 対象層には最大1,500円で入札 |
| 入札価格の上限(Bid Cap) | 可能 | 上限入札額にルールの倍率が乗算される |
| コンバージョン単価の目標(tCPA / Cost Per Result Goal) | 併用不可 | tCPAとバリュールールは同時に設定できない |
| ROAS目標(ROAS Goal) | 条件付き | バリュー最適化が必要。バリュールールとの相互作用に注意 |
現実的な運用フロー
バリュールールを使う場合はtCPAとの併用ができないため、一旦「コンバージョン数の最大化」に切り替えてから方向性を調整し、安定したらtCPAをかけ直すという流れが現実的です。
具体的には以下のステップが考えられます。
・ステップ1:コンバージョン数の最大化でバリュールールを有効化し、14日以上運用
・ステップ2:高価値セグメントへの配信比率やROASの改善を確認
・ステップ3:効果が確認できたら、バリュールールを外してtCPAに戻す(ベースラインが改善された状態で)
・または:Cost Cap + バリュールールの組み合わせで、コスト制御と価値最適化を両立させる
Alex Neiman氏は、Cost Cap + バリュールールの組み合わせを「セグメント優先順位付けにコストのガードレールをかける最良の組み合わせ」と評価しています。
その他の制約事項
・対応キャンペーン目的:売上(Sales)とアプリプロモーション(App Promotion)のみ。認知やトラフィック目的では利用不可
・Advantage+カタログ広告:現時点では非対応
・特別広告カテゴリ(住宅・雇用・クレジット):利用不可
・コスト増加の警告:Meta公式ドキュメントで「コンバージョン単価が20%〜1,000%増加する可能性がある」と明記されている
・ルール数の上限:1ルールセットあたり最大10ルール、1アカウントあたり最大6ルールセット
・ラーニングフェーズのリセット:バリュールールの追加・大幅変更でラーニングフェーズが再開される
モニタリングとターゲティング|ラベルはどちらに使えるのか?
参照元:Meta Redesigns Audiences Around Labels – Jon Loomer Digital(2026年7月16日)
ここで重要な区別があります。オーディエンスラベルはターゲティング設定ではなく、入札調整のためのシグナルです。
ラベルだけでは「ターゲティング」にはならない
ラベルをつけただけでは、そのオーディエンスに対して配信が限定されるわけではありません。バリュールールを設定して初めて、入札額の増減を通じた「間接的なターゲティング」が機能します。
つまり、ラベルの使い方は2段階あります。
・モニタリング(分類・管理)用途:ラベルを付けてオーディエンスを整理・フィルター・検索しやすくする。バリュールールを設定しなければ配信への影響はゼロ。これは今回のUI刷新で大幅に使いやすくなりました。新UIではラベルなしオーディエンスを選択して一括でラベル付与が可能です。
・入札調整(間接的ターゲティング)用途:バリュールールと組み合わせて特定セグメントへの入札額を調整する。入札を上げればそのセグメントへの配信が増え、下げれば減りますが、完全な除外にはなりません(最大-90%でも10%分の入札は残る)。完全に除外したい場合は、広告セットレベルのオーディエンス除外を使う必要があります。
Advantage+環境下での意味
Advantage+キャンペーンでは、Andromedaがクリエイティブ起点でオーディエンスを自動的に引っ張ってくるため、運用者が配信先を直接コントロールする手段は限られています。その結果、「今すぐ購入する層」に配信が集中することがあります。
バリュールール + ラベルは、この課題に対してMetaが運用者側にコントロールを戻そうとする仕組みの一つです。完全なターゲティング指定ではありませんが、入札シグナルを通じて「この層にはもっと積極的に」「この層は控えめに」という意思表示ができます。
ASC(Advantage+ショッピングキャンペーン)でのベストプラクティス
参照元:Meta Value Rules for Audiences: 2026 Practitioner Guide – Alex Neiman(2026年5月4日)
ASC(Advantage+ショッピングキャンペーン)はMeta広告の主力フォーマットの一つですが、バリュールールとの組み合わせには注意が必要です。
ASCでバリュールールを使う際の注意点
ASCにはもともと「既存顧客への予算上限」機能があります。例えば「予算の30%以上は既存顧客に使わない」という設定です。Alex Neiman氏はこの既存顧客キャップとバリュールールを同じキャンペーンで併用しないことを推奨しています。
理由は、2つの仕組みが矛盾するシグナルを生むためです。
・既存顧客キャップ → 「既存顧客への配信を制限しろ」
・バリュールール → 「高価値既存顧客にはもっと入札しろ」
この2つを同時に設定すると、Metaのオークションロジックが受け取るシグナルが曖昧になり、最適化の精度が落ちます。
推奨されるアカウント構成(主観)
ASCとオーディエンスラベルを活用する場合、以下のような構成が考えられます。
パターン1:ASCは既存顧客キャップで運用、バリュールールは別キャンペーンで
・ASC(メインの売上キャンペーン):既存顧客キャップを設定してプロスペクティング重視
・別途リテンション or プロスペクティング専用キャンペーン:バリュールールを設定して高価値セグメントへの入札調整
パターン2:ASCでバリュールールを使う場合は既存顧客キャップを外す
・ASCでバリュールールを有効化し、ラベル付きオーディエンスで入札調整
・既存顧客キャップは使わない
・Cost Capで全体のコストを制御
前提条件:データボリューム
Jon Loomer氏・Alex Neiman氏ともに、月間100コンバージョン以上のセグメントでないとラベルの精度が出ないと指摘しています。小規模アカウントでは、細かいサブラベル(高価値/低価値の区別など)よりも、大枠のラベル(「全顧客」「適格リード」など)から始めるのが現実的です。
また、1ClickReport社の実践ガイドでは「AOVの分散が3倍以上ある場合にバリュールールの効果が出やすい。AOVが±30%以内に収まるなら、バリュールールは不要」という判断基準も紹介されています。
海外の主要ソースまとめ
今回の記事作成にあたって参照した海外ソースの一覧です。
| ソース | 記事タイトル | 主な内容 |
|---|---|---|
| Jon Loomer Digital | Meta Redesigns Audiences Around Labels(2026年7月16日) | 2026年7月のUI刷新の詳細解説。ラベルの各カテゴリ、新UIの操作方法、バリュールールとの関係 |
| Jon Loomer Digital | Meta Value Rules for Audiences Explained(2026年4月21日) | バリュールールのオーディエンス拡張の初報。ラベルの仕組み、各グループの定義、ユースケース |
| Alex Neiman | Meta Value Rules for Audiences: 2026 Practitioner Guide(2026年5月4日) | DTC向け実践ガイド。ASCとの統合方法、ラベルのDTC向けマッピング、導入判断フレームワーク |
| TheOptimizer | Meta Ads Value Rules: How They Work(2026年6月2日) | バリュールールの技術的な仕組み、入札計算式、フェーズ別導入ステップ |
| 1ClickReport | Meta Value Rules: Bid More for Your Best Customers(2025年11月20日) | セットアップチェックリスト、入札戦略との互換性表、実践的な4段階テンプレート |
| Meta公式 | About Audience Labels for Custom Audiences | ラベル機能の公式ドキュメント |
最後に
2026年7月のオーディエンスUI刷新は、見た目の変更にとどまらず、Meta広告の運用思想の転換を反映しています。Advantage+でアルゴリズムに任せる流れが続く中、バリュールール+オーディエンスラベルは「運用者がMetaに対して自社の顧客価値を教える」ための仕組みです。
ただし、制約も多くあります。tCPAとの併用不可、対応がCRMリストのみ、月間100CV以上の推奨ボリューム、コスト増加リスクなど、すべてのアカウントに適用できるわけではありません。
まずはラベルを「モニタリング(分類・管理)」目的で付与するところから始め、十分なデータ量がある場合にのみバリュールールと連携する——という段階的なアプローチが推奨されます。

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