注目のポイント
Meta広告で、広告主の身元確認を求められるアカウントが増えています。Metaは2026年3月に、認証済みの広告主から広告収益の90%を得る方針を公表しました。現在は70%です。背景にあるのは、SNSを入口にした投資詐欺の被害拡大です。2025年のSNS型投資詐欺の被害額は1,288億円で、前年から47.9%増えました。2026年8月には、7つの府省庁がMetaを含むSNS大手5社に、広告主の本人確認を強化するよう要請しています。認証には登記簿謄本などの公的書類が必要で、クライアント名義のものをそろえる必要があります。通知が来てから集め始めると間に合いません。
Meta広告の身元確認は、なぜ厳しくなっているのですか?
SNSを入口にした投資詐欺の被害が急増し、日本政府がプラットフォーム各社に対策を求めたためです。
警察庁の確定値によると、2025年のSNS型投資詐欺は認知件数9,523件、被害額1,288.0億円でした。被害額は前年から416.9億円、率にして47.9%増えています。SNS型ロマンス詐欺の546.4億円を合わせると、1,834.4億円になります。
この数字は特定のプラットフォームのものではなく、SNS全体の合計です。ただ、著名人の写真や映像を使った、いわゆる「なりすまし広告」が入口になっているケースが多く、広告を扱う各社が名指しで対応を求められる流れになりました。
参照元:令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)(警察庁・2026年6月5日)
日本政府はMetaに何を求めたのですか?
2026年8月7日、7つの府省庁が、Google・LINEヤフー・Meta・TikTok・Xの5社に対し、なりすまし詐欺広告への対策強化を要請しました。
要請したのは、警察庁、金融庁、消費者庁、デジタル庁(取りまとめ)、総務省、法務省、経済産業省の7府省庁です。内容は大きく2つに分かれています。
- 広告主が誰かを確認し、追跡できる状態にすること:政府は具体例として、個人であればマイナンバーカード、法人であれば商業登記電子証明書を挙げています
- 利用者に情報を開示すること:広告主の名称と所在地、身元確認が済んでいるかどうかを表示し、広告であることを明示する。生成AIで主に作られた広告にはその旨を示し、なぜその広告が表示されたのかも分かるようにする
公的な身分証や登記の証明書を出す、という方向性がここではっきりしました。
参照元:7府省庁がSNS大手5社に要請 ──「なりすまし詐欺広告」対策で、広告主の本人確認と生成AI表示を求める(ExchangeWire Japan・2026年8月17日)
Metaは何を目標にしているのですか?
認証済みの広告主から広告収益の90%を得ることです。期限は2026年末としています。
Metaは2026年3月の公式発表で、現在は認証済み広告主が広告収益の70%を占めており、これを2026年末までに90%へ引き上げると説明しています。残る10%は、リスクの低いビジネスが占める想定です。
同じ発表の中で、認証はすでに一部の広告主に必須であり、その対象は「どの地域に広告を配信しているか」といった要素で決まると書かれています。つまり、配信先の国によって必須になるかどうかが変わる、という作りになっています。
拡大はリスクの高いカテゴリーから進めるとされていますが、具体的にどの業種なのか、どの国がいつ対象になるのかは示されていません。
日本はいつから必須になるのですか?
時期について、Metaの公式な記載を確認できませんでした。
広告業界では「2027年4月から日本でも必須になる」という案内が出回っており、未認証だと日本向けの新しい広告を公開できない、既存の広告も編集すると公開できなくなる、という内容が含まれています。
ただしこの日付と条件について、筆者はMetaの一次情報を確認できていません。出典として挙げられているMetaのヘルプ記事が公開の検索結果に出てこないためです。管理画面のヘルプから読める可能性はありますので、ここは断定を避けます。
確かなのは、Metaが2026年末に向けて対象を広げている最中だということと、日本政府が2026年8月に本人確認の強化を求めたという2点です。この2つを並べると、日本の広告主に順番が回ってくるのは時間の問題だと考えています。
何を提出するのですか?
ビジネス設定の「セキュリティセンター」から手続きを始め、2種類の書類を出します。ビジネスポートフォリオの管理者権限を持つユーザーで操作する必要があります。
- 法的名称を証明する書類(いずれか1点):登記簿謄本、会社設立証書、納税証明書または納税通知書、営業許可証、定款
- 住所または電話番号を証明する書類(いずれか1点):公共料金の領収書、銀行口座明細書、法人番号の指定通知書、住所や電話番号が記載された営業許可証
落ちる原因で一番多いのが、住所の表記ゆれです。「1-2-3」と「1丁目2番3号」が違うだけで否認されます。入力する住所は、登記簿と一字一句そろえてください。
書類は発行から3〜6か月以内、カラーで文字が鮮明に読め、四隅が欠けていないことが条件です。スマートフォンで斜めに撮った写真は、影や反射で落ちます。
参照元:【Google広告ほか】主要広告媒体の本人確認手続き手順と必要書類まとめ(プライムナンバーズ)
Google広告の確認と何が違うのですか?
Google広告の「広告主様の適格性確認」を経験している方は、同じ発想のものだと考えて差し支えありません。大きく違うのは、提出するものの中身です。
| 項目 | Meta広告 | Google広告 |
|---|---|---|
| 始める場所 | ビジネス設定の「セキュリティセンター」 | 通知バー、または「料金」メニュー内の「広告主様の適格性確認」 |
| 申請の単位 | 法人・ビジネス単位 | 「組織」または「個人」を選択 |
| 会社の書類 | 法的名称の証明+住所または電話番号の証明 | 組織の登録書類(登記簿謄本など) |
| 代表者の身分証 | 不要 | 必要(パスポート、運転免許証、マイナンバーカードなど) |
| 権限 | 管理者権限が必要 | 記載なし |
Googleは代表者の顔写真付き身分証まで求めるのに対し、Metaは会社の書類が中心です。ただし政府の要請ではマイナンバーカードが例示されているため、今後Metaが個人の身分証を求めるようになる可能性はあります。
いま何をしておけばいいですか?
代理店の立場で運用している場合、先に決めておくべきことが1つあります。認証の手続きを誰がやるのか、という点です。
提出する書類はクライアント企業のものです。代理店が代わりに手続きを進められるケースもありますが、書類そのものはクライアントから出してもらうしかありません。つまり、待ち時間が全部クライアント側に乗ります。
筆者の経験では、登記簿謄本を取ってもらうだけで1週間、法務担当を経由するともう1週間かかります。通知が届いてから動き始めると、猶予期間に間に合わないおそれがあります。
いまのうちにやっておけることは、次の3つです。
- 運用している全アカウントで、ビジネスマネージャの持ち主がどこかを一覧にする
- 各アカウントの認証ステータスを確認し、未完了のものを洗い出す
- 未完了のクライアントに、登記簿謄本と公共料金の領収書の手配を先にお願いしておく
特に1つ目が重要です。ビジネスマネージャを代理店が持っているのか、クライアントが持っているのかで、声をかける相手が変わります。ここが整理できていないと、通知が来てから慌てることになります。
最後に
この話は、新しい機能の追加ではなく、出し手の側を選別する動きです。詐欺広告への規制圧力が出発点なので、方向が緩む可能性は低いと見ています。
一方で、認証そのものは難しい手続きではありません。登記簿謄本と公共料金の領収書を用意して、住所の表記をそろえて出すだけです。難しいのは手続きではなく、クライアントに書類を出してもらうまでの段取りです。
通知が来てから動くと、書類待ちの間に広告が止まるおそれがあります。急ぐ必要はありませんが、アカウントの一覧と認証ステータスの確認だけは、年内に済ませておくことをおすすめします。

北海道旭川市出身。Web業界にて20年以上、大手から中堅代理店の顧問を請負。デジタルマーケティングを中心に、主に広告関係の教育や研修、コンペの相談に乗っています。またSEMのお役立ちツールもスクラッチで開発。現在も電通グループの顧問、Shirofuneのアルゴリズム作成補助など担当しており、年間100名以上を教育。皆さまに心から信頼されるパートナーであり続けるために日々研鑽しております。また、世界的権威のある One Voice Awards USA 2025 にも日本人としてノミネートされ、世界的なナレーターとしても活躍中です。最近では声優業でも精力的に活動中。





