注目のポイント
Google広告のカスタマーマッチに「拡張マッチング(Enhanced Matching)」という新しいオプションが追加されました。有効にすると、広告主がアップロードしたカスタマーマッチリストとパブリッシャー(広告掲載先)のリストを、プライバシーに配慮した方法で照合し、Google以外のサイトでのオーディエンスリーチを拡大できるようになります。従来のカスタマーマッチはGoogleアカウントに紐づくメールアドレスでしかマッチングできませんでしたが、拡張マッチングではGoogleアカウント以外のメールアドレスでもマッチング可能になります。
拡張マッチングとは何か?
Google広告の管理画面で、アカウント設定 → カスタマーマッチのセクションに新たに追加されたオプションです。英語では「Enhanced Matching for Customer Match」と表記されており、設定画面には以下のように記載されています。
「Expand your audience reach with your consented user lists. We’ll match your consented users with publishers’ consented users where available.(同意済みユーザーリストでオーディエンスリーチを拡大。同意済みパブリッシャーのユーザーと照合します)」
この機能はオプトイン形式で、チェックを入れなければ有効になりません。2026年8月時点で、日本のアカウントでもこの設定項目が確認されています。

参照元:Google Ads Enhanced Matching In Customer Match(Search Engine Roundtable、2026年8月20日)
従来のカスタマーマッチと何が違うのか?
従来のカスタマーマッチと拡張マッチングの主な違いを整理します。
| 従来のカスタマーマッチ | 拡張マッチング(新機能) | |
|---|---|---|
| マッチング対象 | Googleアカウントに紐づくメールアドレスのみ | Googleアカウント以外のメールアドレスも対象 |
| 照合先 | Google内部のユーザーデータ | パブリッシャー(広告掲載先サイト)のユーザーリスト |
| メンバーシップ期間 | 最大540日 | 最大60日 |
| サードパーティCookie | 必要な場合あり | Cookieなし環境でも動作 |
| リーチ先 | 主にGoogleが所有するサービス | 対応パブリッシャーのサイトにも拡大 |
最大の違いは、Googleアカウントを持っていないユーザーにもマッチングできる点と、サードパーティCookieなしの環境でも動作する点です。一方で、メンバーシップ期間は540日から60日に短縮されます。
参照元:About enhanced matching for Customer Match(Google 広告 ヘルプ、英語版)
仕組み:データはどう扱われるのか?
拡張マッチングでは、プライバシーに配慮したセキュアな照合環境が使われます。仕組みは以下の通りです。
- 広告主のカスタマーリストとパブリッシャーのカスタマーリストが、隔離されたセキュアな環境に送られる
- その環境内でマッチング処理が実行される
- 広告主もパブリッシャーも、相手の生データ(メールアドレスなど)を見ることはできない
- Google自身もマッチングされた生データを見ることはできない
つまり、ユーザーの生データが第三者に「共有」されるわけではなく、暗号化されたデータ同士がセキュアな環境で「照合」されるだけです。Googleのヘルプでも「raw information is never shared between parties(生の情報が当事者間で共有されることはない)」と明記されています。
ただし、プライバシーに配慮した形とはいえ、ユーザーデータを第三者のパブリッシャーと照合する行為には変わりありません。広告主としては、有効にする前にクライアントへの確認を取っておくべきでしょう。
参照元:About enhanced matching for Customer Match(Google 広告 ヘルプ、英語版)
どんな場面で効果があるのか?
拡張マッチングが効果を発揮するのは、Google以外のサイトでカスタマーマッチのオーディエンスを使いたい場合です。
ターゲティングの拡大
例えば、既存顧客リストをGoogleディスプレイネットワーク(GDN)の掲載先サイトでもターゲティングに使いたい場合、従来はそのユーザーがGoogleアカウントでログインしていないと照合できませんでした。拡張マッチングでは、パブリッシャー側のユーザーリストとも照合するため、Googleアカウント以外のメールアドレスを使っているユーザーにもリーチできる可能性があります。
除外の精度向上
既存購入者を広告配信から除外したい場合にも有効です。パブリッシャー側でもユーザーを照合できるため、対応しているサイトではより正確に除外が機能します。
この機能が効かないケース
以下の用途では、拡張マッチングは効果がありません。
- コンバージョン計測の改善(この機能はオーディエンスマッチングであり、コンバージョン計測とは無関係)
- Googleが所有するサービス(YouTube、Gmail、Google検索など)でのリマーケティング改善(従来のカスタマーマッチで対応済み)
- Cookieベースのウェブサイト訪問者リスト(この機能はカスタマーマッチリスト専用で、訪問者リストには適用されない)
対応しているパブリッシャー
Googleのヘルプでは、拡張マッチングで利用できるドメインの例として以下が挙げられています。
- yahoo.com
- web.de
- live.com
- outlook.com
これらはいずれもグローバルなメールプロバイダーです。一方で、Yahoo! JAPAN(yahoo.co.jp)やLINEなど日本独自のサービスが対応しているかどうかは、現時点のヘルプページには記載がありません。なお、このヘルプページ自体がまだ英語版のみで、日本語版は2026年8月時点で存在していません。
参照元:About enhanced matching for Customer Match(Google 広告 ヘルプ、英語版)
有効化の方法
- Google広告の管理画面で[管理者(Admin)]→[アカウント設定(Account settings)]を開く
- 「カスタマーマッチ(Customer Match)」セクションを展開する
- 「Expand your audience reach with your consented user lists…」のチェックボックスにチェックを入れる
有効化後は、今後アップロードするカスタマーマッチリストに対して拡張マッチングが適用されます。既存のリストに適用したい場合は、手動で再アップロードが必要です。APIや自動連携で定期更新しているリストは、次回の同期時に自動的に適用されます。
最後に
拡張マッチング(Enhanced Matching)は、カスタマーマッチのリーチをGoogle以外のサイトにも広げるための仕組みです。サードパーティCookieの廃止が進む中で、Cookieに依存しないマッチング手法として位置づけられています。
ただし、いくつか押さえておくべき点があります。メンバーシップ期間が従来の540日から60日に短縮されること、対応パブリッシャーが限定的であること、そしてプライバシーに配慮した形とはいえユーザーデータを第三者と照合する行為であることです。代理店の方は、有効化する前にクライアントへの説明と承認を得ておくことをおすすめします。

Web業界にて20年以上、大手から中堅代理店の顧問を請負。デジタルマーケティングを中心に、主に広告関係の教育や研修、コンペの相談に乗っています。またSEMのお役立ちツールもスクラッチで開発。現在も電通グループの顧問、Shirofuneのアルゴリズム作成補助など担当しており、年間100名以上を教育。皆さまに心から信頼されるパートナーであり続けるために日々研鑽しております。また、世界的権威のある One Voice Awards USA 2025 にも日本人としてノミネートされ、世界的なナレーターとしても活躍中です。




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