注目のポイント
ChatGPT広告(OpenAI Ads Manager)の管理画面では月別・日別・キャンペーン別・広告別の基本指標しか確認できず、深いインサイトは出せません。コンテキストのヒントに地域や時間帯を指定しても制御は効きませんでした。そこでGA4を使って実配信データを分析した結果、エンゲージメント率はGoogle検索広告・Yahoo!検索広告の半分以下、間接セッション寄与は9%、リピート率も10%未満。現時点では検索広告の代替にはなりません。コンバージョン数の最大化が実装されるまでは獲得系案件での運用は困難で、ディスプレイ広告用LPへの配信が現実的です。
目次
なぜGA4での分析が必要なのか——管理画面の限界
ChatGPT広告の管理画面(OpenAI Ads Manager)で確認できるのは「月別」「日別」「キャンペーン別」「広告別」の表示回数・クリック数・CTR・CPCなど、一般的な数値指標のみです。Google広告のように検索語句レポート・地域別レポート・時間帯別レポート・オーディエンスレポートといった詳細分析の機能がありません。
つまり、管理画面だけではどんなユーザーに、どんな文脈で広告が出ているのかが分からない状態です。
さらに、コンテキストのヒントに地域情報を入れても地域の制御はできず、時間帯を指定しても配信時間の制御は効きませんでした。管理画面でもコンテキストのヒントでも深いインサイトが得られない以上、GA4で分析するしかありません。
前提——ChatGPT広告のアルゴリズムにはまだ「学習」がない
Google広告やMeta広告は、コンバージョンデータやエンゲージメントの情報を蓄積し、そのデータを基にアルゴリズムがオークションを最適化しています。どのユーザーに広告を出すべきかを機械学習で判断しているわけです。
ChatGPT広告には現時点でこの仕組みがありません。キャンペーン目的で「コンバージョン」はまだグレーアウトのままで、コンバージョン数の最大化による入札最適化ができない状態です。つまり、コンバージョンしやすいユーザーを学習して当てに行くアルゴリズムが存在しないまま配信されているということです。
この前提を理解した上で、GA4のデータを見ていきます。
エンゲージメント率とコンバージョン率——検索広告との比較
GA4のエンゲージメント率とは、サイトへの全セッションのうち「10秒以上の滞在」「2ページ以上の閲覧」「コンバージョン」のいずれかを達成した「意味のあるセッション」の割合です。

| チャネル | エンゲージメント率 | コンバージョン率 |
|---|---|---|
| google / cpc | 約72% | 約1.1% |
| yahoo / cpc | 約80% | 約1.15% |
| chatgpt / cpc | 約35% | 約0.08% |
| chatgpt.com / ai-assistant | 約62% | 約0.35% |
ChatGPT広告(chatgpt / cpc)のエンゲージメント率は約35%で、Google検索広告(約72%)やYahoo!検索広告(約80%)の半分以下です。
これは前述の通り、コンバージョンデータに基づくオークション最適化がないため、購買意欲が顕在化していない会話の中にも広告が配信されていることを意味しています。AIとの雑談や情報収集フェーズの段階で広告が表示されている状態です。
なお、chatgpt.com / ai-assistant(オーガニック流入)のエンゲージメント率は約62%と、広告経由よりも高くなっています。ユーザーが能動的にリンクをクリックしている分、意図が明確であるためと考えられます。
検索広告と同じ感覚で運用すると大きなギャップがあります。ここで「検索広告の代替ではない」という判断が一つ確定します。
直間比率——間接セッションへの貢献が低い
検索広告の代替ではないとして、では潜在層や準顕在層への認知施策として機能しているのかを検証します。もし潜在層に当たっているのであれば、広告クリック(直接セッション)だけでなく、後日別チャネルから再訪問する間接セッションの比率が高くなるはずです。

| チャネル | 直接セッション | 間接セッション |
|---|---|---|
| google / cpc | 約70% | 約30% |
| yahoo / cpc | 約75% | 約25% |
| chatgpt / cpc | 約91% | 約9% |
| chatgpt.com / ai-assistant | 約78% | 約22% |
ChatGPT広告の間接セッション比率はわずか9%です。Google検索広告の30%、Yahoo!検索広告の25%と比較すると、ミッドファネルやロウアーファネルへの寄与が極めて低い状態です。潜在層に当たっているとしても、その後のファネル移行に繋がっていません。
リピートセッション——2回以上の訪問が10%未満
間接効果と合わせて、同じユーザーが再訪問しているかも確認します。

| チャネル | 2回目以上のリピート率 |
|---|---|
| google / cpc | 約100% |
| yahoo / cpc | 約58% |
| chatgpt.com / ai-assistant | 約45% |
| chatgpt / cpc | 約10% |
ChatGPT広告経由で2回以上サイトに訪問したセッションは10%未満です。コンバージョンデータを基にオークションを最適化するアルゴリズムがまだ存在しないため、新規ユーザーとリピーターの判別もできていない可能性があります。
地域別セッション構成比——士幌町の異常値(主観)
市区町村別のセッション構成比を見ると、興味深いデータが出ています。

(not set)と大阪に次いで、北海道の士幌町が3番目にセッション数が多いという結果になりました。サイト全体の傾向から見ても明らかな異常値です。
「低入札=競合がいない地域の枠」を買い叩いている可能性があります。日別で確認すると、入札価格を100円以下に下げたタイミングと重なっており、東京など人口比の多いエリアを狙うには入札価格を高く設定する必要があると考えられます。
前述の通り、コンテキストのヒントに地域を入力しても地域の制御はできませんでした。
時間帯×曜日別データ——ペーシングはあるがCVRは低い(主観)

時間帯×曜日別のデータを見ると、キャンペーンの日予算に対するペーシング機能は動いている印象です。午前中にすべての予算が消化されるということはありません。
ただし、コンバージョン率は全体的に低く、当てるオークションのアルゴリズムがクリック最大化に寄っている可能性があります。コンテキストのヒントによる時間帯の制御も効きませんでした。
デバイス構成比——モバイルが大半

デバイス別のセッション構成比はモバイルが大半を占めています。ChatGPTアプリの利用がモバイル中心であることを反映した結果です。
ChatGPT広告の現実的な活用方法(主観)
ここまでのデータを整理すると、ChatGPT広告には現時点で以下の構造的な課題があります。
・コンバージョン数の最大化(入札戦略)が未実装 → アルゴリズムが学習しない
・コンテキストのヒントでは地域・時間帯の制御が効かない
・管理画面のレポーティングが貧弱でGA4分析が必須
向いていないケース
・顕在層向けの刈り取り:エンゲージメント率が低く、コンバージョン最適化がないため、顕在化されたオークションに当たっていない。コンバージョン数の最大化が実装されるまでは、獲得系案件での運用は困難
・ブランディング案件:間接セッション寄与が9%と低く、ファネル移行に繋がらない。さらにCPMが高すぎる。同じ予算ならディスプレイ広告の方がクリエイティブのバリエーションも多く、リーチ効率も高い
可能性があるケース
・浅いコンバージョンポイント:資料請求やメルマガ登録、アンケートLPなど、ハードルの低いCVポイントであれば獲得の可能性はある
・お悩み系の案件:ユーザーがChatGPTに相談している文脈に合致すれば、広告のクリック率は上がる(審査が通れば)
・ディスプレイ広告用LP:記事LPなど準顕在層・潜在層を受け止めるページに飛ばして、そこからファネルアップさせる設計の方が合っている
最後に
ChatGPT広告の実配信データをGA4で分析した結果、現時点では検索広告の代替にもブランディング施策にもなりません。
根本的な課題はアルゴリズムの学習機能がまだないことです。「コンバージョン数の最大化」が実装されない限り、顕在化していないオークションに広告が出続ける構造は変わりません。
現実的な打ち手としては、コンバージョン最適化の実装を待つか、ディスプレイ広告用LP(記事LP・アンケートLP)に配信してファネルアップの導線として使うかの二択です。CPCの高さも課題で、ランオブネットワークでフリークエンシーキャップなしの配信の方がリーチは広がるかもしれません。
日々、代理店の運用担当者と壁打ちしながらアルゴリズムの研究を続けていますので、新しい発見があれば随時更新します。現場からは以上です。

Web業界にて20年以上、大手から中堅代理店の顧問を請負。デジタルマーケティングを中心に、主に広告関係の教育や研修、コンペの相談に乗っています。またSEMのお役立ちツールもスクラッチで開発。現在も電通グループの顧問、Shirofuneのアルゴリズム作成補助など担当しており、年間100名以上を教育。皆さまに心から信頼されるパートナーであり続けるために日々研鑽しております。また、世界的権威のある One Voice Awards USA 2025 にも日本人としてノミネートされ、世界的なナレーターとしても活躍中です。




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