この記事は8分で読むことができます。
記事サマリー
この記事を読んでわかること
-
- 2024年以降の広告業界のプライバシー保護に不安がある方が、最新の取り組みを理解出来ます
- デジタルマーケティングに関わる方が、クッキーレス時代への適応力を高めることができます
こんな方へオススメの記事
-
- デジタル広告業界の動向に興味があるマーケターや広告関係者
- プライバシー保護に関心がある広告主様やデータサイエンティスト
この記事の特徴
-
- ユーザー追跡をしながらプライバシー保護を強化する新技術
- GoogleChromeを中心に、ユーザーのプライバシー保護を目指したプロジェクト
- サードパーティクッキーの利用制限に対応し、プライバシーに配慮した広告配信
Chromeの3rdパーティCookieの段階的廃止
デジタル広告業界はプライバシー保護の観点から様々な影響を受けており、Chromeの3rdパーティCookieの段階的廃止への準備が進められています。2024年第1四半期からChromeユーザーの1%を対象にサードパーティCookieの無効化を開始すると書かれています。
参照ページ:ウェブ向けのプライバシー サンドボックスのスケジュール
参照ページ:サードパーティ Cookie の段階的廃止への準備
3rdパーティCookieが廃止されると、マーケティングミックスモデル(MMM)の時系列のデータによる因果関係の特定や、フィンガープリントなどのユーザーを推定する技術に逆戻りしてしまい、ユーザーに必要な情報が必要なタイミングでリアルタイムに届かなくなってしまいます。関係ない広告ばかり出ることが多くなってしまい、それはユーザーも広告配信媒体も望んでいる世界ではありません。
その対策として、Cookieレス時代の広告業界の取り組みについは大きく二つあります。一つは顧客情報である1stパーティデータのメールアドレスや電話番号を利用した拡張コンバージョンによるデータの補完です。二つ目はプライバシーサンドボックスの情報をどのように取り扱い、精度の良い広告配信とレポーティングを行えるかです。
この記事では、二つ目のプライバシーサンドボックスについて記載します。拡張コンバージョンについてはこちらの記事を参照してください。
目次
プライバシーサンドボックスとは
プライバシーサンドボックスとは、ユーザーのブラウザ行動をプライバシー保護しつつデータを収集するChromeの取り組みです。
ユーザーの個人情報を適切に保護しながら、広告業界を機能させることになります。2023年12月でははどのように使われているのかというと、媒体アルゴリズム開発者がテストをしてフィードバックする、いわゆるβバージョンのような期間です。
それでは、WEBを利用するユーザーはプライバシーサンドボックスをどのように利用をするかです。ユーザーがChrome上でプライバシーサンドボックスをONにすると、Chromeが3rdパーティCookieに代わり、ユーザーの行動や興味関心の情報を収集し、ユーザーのプライバシーを保護しながらデータを引き渡します。
ではそのデータはどのようにデータを渡すのか、広告主とGoogleやYahoo!の媒体社で取得レベルが異なっていますが、両社ともに個人を特定する情報は取得できません。
広告主側で取得できるデータ
プライバシーサンドボックスAPIを通じて、広告主の自社WEBサイトに来訪したユーザー対してデータを取得します。集団の集約されたデータ(コホート)や一般化された広く全体に通用する情報に限られます。具体的には、どのように商品を購入したユーザーとか、興味関心のデータなどがわかります。
Googleなどの媒体社が取得できるデータ
GoogleなどのプラットフォーマーはプライバシーサンドボックスAPIを通じて、プラットフォーム上(媒体ドメインやディスプレイの配信面)でのユーザー行動に関するより詳細なデータにアクセスできます。
しかしGoogle自体もプライバシーサンドボックスの原則に従い、集団の集約されたデータ(コホート)や一般化された広く全体に通用する情報に限られます。こちらも、サイトに来たことがあるユーザーとか、広告を見たユーザーなどのデータがわかります。
プライバシーサンドボックスAPIにはどのような種類があるの?
複数APIが用意されているのですが、今回はユーザー行動(ターゲティング)と測定の二つに言及します。まずはユーザー行動の利用シーンごとにAPIが二つ用意されています。
Topics API(興味関心のターゲティング)
ユーザーが訪問するサイトをトラッキングすることなく、インタレストベース広告(IBA)が可能になります。
インタレストベース広告は、Topics API の重要な概念です。これはパーソナライズされた広告の一種で、ユーザーが最近アクセスしたサイトから推定された興味に基づいて、ユーザーに表示する広告が選択されます。
https://developer.chrome.com/ja/docs/privacy-sandbox/topics/overview/
Protected Audience API(リターゲティングとカスタムオーディエンス)
クロスサイト サードパーティ トラッキングを使わずにリマーケティングとカスタム オーディエンスにサービスを提供するオンデバイス広告オークション。
サードパーティがサイトを跨いでユーザーのブラウジング行動を追跡できないように設計されています。
https://developer.chrome.com/ja/docs/privacy-sandbox/protected-audience/
他にも計測周りのプライバシーサンドボックスAPIが二つ用意されています。
Attribution Reporting API (アトリビューション)
広告のクリックまたは表示が、販売やサインアップなど、広告主サイトでのコンバージョンにつながる時期を測定できます。
API は、サイト全体で個々のユーザーを識別するのに使用できるサードパーティ Cookie やメカニズムに依存していません。
https://developer.chrome.com/ja/docs/privacy-sandbox/attribution-reporting-introduction/
Private Aggregation API (ユーザーの年齢層や広告キャンペーンのインプレッション数)
クロスサイトデータへのアクセスによりワークレットからの集計データの収集を可能にします。ここで共有するコンセプトは、共有ストレージおよび FLEDGE 内でレポート作成機能を構築する開発者にとって重要となります。
https://developer.chrome.com/ja/docs/privacy-sandbox/private-aggregation-fundamentals/
媒体社の研究が配信精度へ直結
広告媒体社やDSPの広告配信媒体は、プライバシーサンドボックスを利用した配信と従来の3rdパーティCookieを利用した配信の精度の検証が必要になります。
主に、ターゲティングの効果、広告の配信パフォーマンス、ユーザーのエンゲージメント、プライバシーの準拠の観点が大きいです。現状でプライバシーサンドボックスのリリースを出していない媒体社が多く、一刻も早い検証をして欲しく記事を作成しました。
代理店は、プライバシーサンドボックスにどう向き合うのか?
一つ目は、各広告配信媒体社の見極めです。プライバシーサンドボックスの下では、プラットフォーム上のデータ取得能力が重要になります。
Googleのような広範な利用者ベースを持つプラットフォームは、より包括的なデータを提供し、結果として広告パフォーマンスに有利な可能性があります。媒体のユーザー特性もあり、異なる広告配信業者は異なるターゲティング能力を持っています。
広告代理店は、どのプラットフォームが特定のキャンペーンや広告主のニーズに最適かを評価する必要があります。
二つ目は、広告主がプライバシーサンドボックスやCookieレス環境の知識に不慣れな場合、広告代理店はプライバシーサンドボックスAPIを利用してデータを収集し、分析することで透明性を持ったレポーティングの作成をお手伝いをすることが出来ます。
2024年の広告業界は、プライバシーサンドボックスによってどう変わるのか?
まだわからないことが多いですが、2024年にプライバシーサンドボックスが広く導入されることによって、プライバシー重視の広告、広告ターゲティングの変化、新しいビジネスモデルの登場、広告効果測定の進化、広告配信媒体社の競争の激化が予測されます。
これらの予測はあくまで推測に基づくものでありますが、実際の2024年の状況は広告業界全体に影響を与え良い方向に動くことを願っています。
Web業界にて20年以上、大手から中堅代理店の顧問を請負。デジタルマーケティングを中心に、主に広告関係の教育や研修、コンペの相談に乗っています。またSEMのお役立ちツールもスクラッチで開発。現在も電通グループの顧問、Shirofuneのアルゴリズム作成補助など担当しています。皆さまに心から信頼されるパートナーであり続けるために日々研鑽しております。皆様に直接お会いし、お話しできる機会がありましたら、SEMの運用コンサルから無料相談まで、ぜひお気軽にお声がけください。