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記事サマリー
この記事を読んでわかること
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- 広告代理店業界の構造変化とリプレース対策
こんな方へオススメの記事
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- 広告代理店で働く営業・運用担当者
この記事を実践するための準備
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- 担当クライアントとの関係性の見直し
目次
サイバーエージェント減収から見る広告代理店業界の構造変化
サイバーエージェントの2025年9月期第3四半期決算で、広告事業が5年ぶりの減収を記録しました。この結果に少し驚いていますが、実は業界全体の構造変化を象徴する出来事だと捉えています。
参照:サイバーエージェント、広告事業が減収減益の危機 正念場のAI革命
総務省のデータを見ると、デジタル広告業界自体は2025年度も対前年比110%程度の成長を続けると予想されます。つまり、市場は年々10%程度の成長を維持している中で、なぜ代理店が減収減益に陥っているのでしょうか。
広告代理店の顧問を複数していて思う「インハウス化の波が加速する理由」
どの代理店でも減収の主因は、大手クライアントがマーケティングをインハウス化(内製化)し、代理店から離脱したことです。この流れは業界全体のトレンドになりつつあります。
なぜインハウス化が進むのか
1. 人材定着率の悪さ 広告代理店の勤続年数が1年から1年半程度と短くなっています。頻繁な組織編成もあり、担当者がコロコロ変わる状況が続いています。
2. Feeに見合う価値への疑問 クライアント側からすると、「これだけ代理店の担当が変わるのに、毎回20%のフィーを払い続けるべきなのか?」という疑問が生まれます。であれば、自社で人材を採用し、20%の費用をかけても同じコンバージョン数が維持できれば十分だという判断になります。
3. AIの台頭による運用の簡易化 AIによってキャンペーン設定の複雑さが大幅に軽減されました。例えば、以前は検索、ディスプレイ、Googleマップ、動画広告など細かく設定していたものが、現在はP-MAXなどで一括運用できるようになりました。
インハウス化の現実と課題
弊社でもインハウス支援やアカウント構成のアドバイザリーを行っていますが、正直なところ、基本的な運用であれば代理店に依存しなくても問題ないと思っています。初期設定と適切な予算調整させ出来れば、代理店からスイッチしてもコンバージョン数が減ることはありません。
ただし、クライアント側にも課題はあります。広告媒体の情報の鮮度や適切な評価制度の構築など、自社で広告運用体制を整えるのは相当な労力を要します。しかし、第一段階として代理店から離れて20%のフィーを削減するメリットは明確に見えている状況です。
代理店が生き残るために必要な3つの要素
この構造変化の中で、どうやってリプレースされずに業界で働き続けるか。重要なポイントは以下の3つです。
1. 先回りできる能力
クライアントが求める前に、必要な情報や提案を提供できる人材になることです。AIは聞かれなければ答えてくれませんが、人間は事前に察知して行動できます。これにはクライアントのビジネスを深く理解する努力が不可欠です。
2. 一緒にいて楽しい人間性(愛嬌)
「この人と一緒に仕事をすると楽しい」「成果も上がる」と思われる人間性です。これはAIでは代替できない、人間ならではの価値です。
3. 継続的な成果創出
常に勉強を続け、最新の情報をキャッチアップし続けることです。業界の変化に対応し、クライアントに価値を提供し続けられる人材であることが求められます。
最後に
リプレースは人が変わるタイミングで発生することです。これは代理店側の担当者変更だけでなく、広告主側の役員、上長、決裁担当者といったステークホルダーの変更時にも起こりうります。弊社では代理店リプレースがほとんどありませんが、これらの人事変更には常に注意を払っています。
サイバーエージェントの減収は、広告代理店業界全体が直面している構造変化の象徴的な事例です。市場は成長していますが、従来の代理店モデルでは価値提供が困難になりつつあります。
生き残るためには、AIでは代替できない人間ならではの価値を提供し続けることが重要です。先回り力、人間性、そして継続的な学習による成果創出—これらを磨き続けることで、変化の激しい業界でも価値ある存在であり続けることができるでしょう。

Web業界にて20年以上、大手から中堅代理店の顧問を請負。デジタルマーケティングを中心に、主に広告関係の教育や研修、コンペの相談に乗っています。またSEMのお役立ちツールもスクラッチで開発。現在も電通グループの顧問、Shirofuneのアルゴリズム作成補助など担当しています。皆さまに心から信頼されるパートナーであり続けるために日々研鑽しております。また、世界的権威のある One Voice Awards USA 2025 にも日本人としてノミネートされ、世界的なナレーターとしても活躍中です。