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記事サマリー
この記事を読んでわかること
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- 推奨投資戦略」の本質と注意点、プランナーとの明確な違いがわかります
こんな方へオススメの記事
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- Google広告の追加予算の最適な使い方を知りたい、運用担当者の方
この記事を実践するための準備
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- Google広告アカウントと、[最適化案]ページへのアクセス権限
目次
「推奨投資戦略」とは? 追加予算の「最適解」をAIが示す新機能
Google広告を運用する中で、「今週、あと10万円予算を追加できるが、どのキャンペーンに入れるのが最も効率的か?」あるいは「コンバージョン数をあと50件増やすには、トータルでいくら追加投資が必要か?」といった判断に迫られる場面は少なくありません。
これまで、こうした判断は各キャンペーンのCPAやROAS、インプレッションシェア損失率(予算)などを個別に確認し、運用担当者の経験則に基づいて行われることが大半でした。
「推奨投資戦略」とは、「追加予算の最適配分」という課題に対し、AIがデータに基づいた具体的なシミュレーションと提案を行ってくれる、[最適化案] ページ内の新しい機能タブです。
参照:推奨投資戦略について
このツールは、アカウント内のキャンペーンパフォーマンス履歴を分析し、「投資を増額した場合に、クリック数、コンバージョン数、コンバージョン値などの主要指標でどれだけの効果が見込まれるか」をアカウント単位で提示します。
Googleは、この機能の主なメリットとして以下の点を挙げています。
- データドリブンな意思決定:過去の履歴と見込まれる効果に基づき、カスタマイズされた投資戦略が提案されます。
- 目標に沿った提案:「コンバージョン数」や「コンバージョン値」など、重視する指標を選択するだけで、追加投資が目標達成にどう役立つかを確認できます。
- 費用対効果の最大化:アカウント全体のパフォーマンス向上に最も貢献する可能性が高いキャンペーンに予算を割り当てます。
- さまざまな投資シナリオの検討:「もし予算を増やしたら」というシナリオを、詳細な分析を手動で行うことなく検討できます。
つまり、あといくら追加すれば、何件取れる(見込み)」という、運用者が最も知りたい「もしも」のシミュレーションを、AIが手軽に示してくれる機能と言えます。(※ただし、この「予算を割り当てます」という言葉には少し注意が必要です。この点については、次の章で詳しく解説します。)
「推奨投資戦略」の”本質”と3つの注意点
前の章で紹介した「推奨投資戦略」は、一見すると非常に便利な機能ですが、Googleの公式説明だけを鵜呑みにすると、その”本質”を見誤る可能性があります。ここでは、私の視点から、この機能を使いこなす上で絶対に知っておくべき「3つの注意点」を解説します。
結局「インプレッションシェア損失率(予算)」と何が違うのか?
まず、「推奨投資戦略」の提案の本質は、「予算制約による機会損失(=インプレッションシェア損失率(予算))」をAIが分かりやすく可視化してくれたもの、と捉えるのが妥当です。
これまでも、インプレッションシェア損失率(予算)を見れば「予算が足りなくて取りこぼしているキャンペーン」は把握できました。しかし、そこから「具体的にあといくら追加すれば、CPA/ROAS目標を維持したまま、何件コンバージョンが増えるのか?」を算出するのは手間でした。「推奨投資戦略」は、この面倒なシミュレーションを自動化し、「最適化案」としてクリック一つで実行できるようにした機能、というのが私の見解です。
「予算の再配分(アロケーション)」はしてくれない
公式の説明には「キャンペーン間での予算の配分」とありますが、これは「キャンペーンAの予算を削って、効果の良いキャンペーンBに移動する」というアロケーション(最適再配分)をしてくれるわけではなく、「追加の予算がある場合に、それをどこに投下すべきか」を提案する機能です。
効果の悪いキャンペーン予算を減らす提案は(少なくとも現状では)行われません。予算の最適化というよりは、「追加投資の最適化」と考えるべきです。
予測は「7日間」。リードタイムの短い案件向き
「推奨投資戦略」のパフォーマンス予測は「通常7日間」のデータに基づいています。
これは、検討期間が長い商材(不動産、高額なBtoBサービスなど)の分析には向いていません。逆に、ECサイト、資料請求、来店予約など、比較的リードタイムが短く、直近のコンバージョン数を増やしたい案件において、短期的な追加投資の効果を測る際には非常に有効なツールとなります。
「提案が出ない」=予算が足りている証拠
この機能は、[最適化案] ページに常に出てくるわけではありません。「予算による制限を受けている場合」や「CPAをわずかに引き上げることでコンバージョンを増やせる可能性がある場合」にのみ利用できます。つまり、提案が出てこないアカウントは、AIが「現状、予算は十分足りています(追加投資の余地なし)」と判断していることになります。
「パフォーマンスプランナー」との違いとは!?
「推奨投資戦略」の話を聞いて、「それって、前からある『パフォーマンスプランナー』と何が違うの?」と疑問に思った方も多いかもしれません。どちらも予算と成果をシミュレーションするツールですが、その目的と機能は明確に異なります。
- 推奨投資戦略は、「今すぐ追加予算を投下する」ための**短期的な実行(Apply)ツール
- パフォーマンスプランナーは、「来月や来四半期の予算計画を立てる」ための中長期的な計画(Planning)ツール です。
最も決定的な違いは、「推奨投資戦略」が [最適化案] ページにあり、提案をその場で「すべて適用」できるのに対し、「パフォーマンスプランナー」はあくまで計画を作成するだけで、実行は手動で行う必要がある点です。
また、石黒堂様のインプットにもあった通り、「推奨投資戦略」は(現状)追加予算の提案のみで予算の「再配分(アロケーション)」を行いませんが、「パフォーマンスプランナー」はキャンペーン間の予算の移動を含めたシミュレーションが可能です。
比較項目 | 推奨投資戦略(今回の新機能) | パフォーマンスプランナー(従来機能) |
主な目的 | 追加予算の短期的な最適化と即時実行 | 中長期(最大18ヶ月)の予算計画と予測 |
予測期間 | 今後7日間がメイン | 短期および長期(月単位、四半期単位) |
場所 | [最適化案] > [投資戦略] タブ | [ツール] > [プランニング] |
実行 | 「すべて適用」で即実行できる | プラン作成のみ(実行は手動) |
予算再配分 | 不可(追加予算の配分のみ) | 可能(キャンペーン間の予算移動) |
最後に
これら2つのAIシミュレーション機能は、似ているようで目的が全く異なります。そのため、自社の状況や目的に合わせて賢く使い分けることが重要です。
例えば、「今週、急に追加予算が出た。この予算ですぐにでも成果を最大化したい」という短期的な実行フェーズであれば、「推奨投資戦略」を見て、AIの提案を適用するのが良いでしょう。
一方で、「来月(来四半期)の予算編成をどうしようか?もし予算を増やしたり減らしたりした場合の影響を知りたい」といった中長期的な計画(プランニング)のフェーズでは、「パフォーマンスプランナー」を使ってシミュレーションし、計画を作成するのが適しています。
このように、Google広告の便利なAI機能も、その特性を理解し、目的に合わせて正しく使い分けることが、運用成果を高める鍵となります。

Web業界にて20年以上、大手から中堅代理店の顧問を請負。デジタルマーケティングを中心に、主に広告関係の教育や研修、コンペの相談に乗っています。またSEMのお役立ちツールもスクラッチで開発。現在も電通グループの顧問、Shirofuneのアルゴリズム作成補助など担当しており、年間100名以上を教育。皆さまに心から信頼されるパートナーであり続けるために日々研鑽しております。また、世界的権威のある One Voice Awards USA 2025 にも日本人としてノミネートされ、世界的なナレーターとしても活躍中です。