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記事サマリー
この記事を読んでわかること
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- 広告のCVR変動を3Cで切り分ける方法とGoogleトレンド活用術
こんな方へオススメの記事
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- 広告運用の成果要因を正しく判断したいマーケター
この記事を実践するための準備
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- Googleトレンドにアクセスできる環境(無料・登録不要)
デジタル広告運用でGoogleトレンドが必須な理由 -3C分解でCVR要因を切り分ける
デジタル広告運用において、私たちが日々向き合っているのはコンバージョンデータです。現代の広告プラットフォームは、このコンバージョンデータを軸に最適化をすることが多くなってきました。Meta広告のASCやGoogle広告のP-MAXは特にその象徴とも言えます。「ターゲティング」「クリエイティブ」「入札調整」もコンバージョンデータを起点に最適化されていきます。
広告運用者が陥る「パフォーマンス判断の落とし穴」
パターン1:広告だけが絶好調
- 市場全体は横ばいだが、広告の最適化がうまく機能してCV増
- 判断:運用が成功している。さらに予算を投下すべき
パターン2:全体のトレンドで上がっている
- 市場全体の検索需要が130%に増加し、その波に乗ってCV増
- 判断:トレンド要因が大きい。広告の貢献度は限定的
パターン3:全体が下がる中で広告だけ取れている
- 市場全体は80%に減少しているのに、アルゴリズムが優秀でCV増
- 判断:運用が非常に優秀。ただし市場縮小リスクに注意
この切り分けをせずに判断すると、誤った意思決定をしてしまいます。
例えば、パターン2なのに「運用が優秀だ」と判断して予算を大幅に増やすと、翌月トレンドが落ち着いた時に大きく効率が悪化します。逆にパターン3なのに「全体が悪いから」と予算を削減すると、本来取れるはずのシェアを競合に奪われてしまいます。
CVRを3Cで分解する思考法
ここで重要なのが、CPC = CVR × CPA という計算式を分解して考えることです。特にCVRは、実は単一の要因ではなく、複数の外部・内部要因が複雑に絡み合って形成されています。この複雑なCVRを理解するために有効なのが、マーケティングフレームワークの3C分析です。
CVRは以下の3つの「C」で構成されていると考えることができます。
- Customer(顧客・トレンド要因)。これは季節性やトレンドによる検索需要の変動を指します。市場全体の関心度が高まったり低下したりすることで、CVRは大きく影響を受けます。この要因はGoogleトレンドで可視化することが可能です。
- Competitor(競合要因)。競合他社の広告出稿状況や価格変更、キャンペーンの実施などにより、オークションの激化度合いが変わります。競合が積極的に広告を出稿すれば、相対的に自社の広告効果は下がる可能性があります。
- Company(自社運用要因)。ターゲティングの精度、クリエイティブの質、ランディングページの改善、入札戦略の最適化など、自社でコントロールできる運用面の要因を指します。
多くの広告運用者が陥りやすいのは、CVRの変動をすべて「Company(自社運用)」のせいにしてしまうことです。確かに運用改善は常に必要ですが、外部要因を無視してすべてを運用のせいにしてしまうと、本質的な改善ができないまま疲弊してしまいます。
重要なのは、まず3Cで要因を切り分けてから、何に注力すべきかを判断することです。これが本質的な広告運用と言えるでしょう。
ここでGoogleトレンドの出番です。Googleトレンドを使えば、Customer(トレンド要因)を可視化できます!
【実践】表記ゆれを合算する「+」演算子で真の検索ボリュームを掴む
しかし、Googleトレンドを使う上で、多くの広告運用者が見落としているのが表記ゆれの問題です。日本語には、同じ意味でも複数の表記方法が存在します。
- カタカナ vs ローマ字:ガリバー vs Gulliver
- 漢字 vs ひらがな:子供 vs こども vs コドモ
- 送り仮名の違い:お問い合わせ vs お問合せ
例えば、中古車買取の「ガリバー」を考えてみましょう。弊社は関わりがありませんが、この前クルマ査定のところを見ていて気づいたのですが、ユーザーは「ガリバー」とカタカナで検索する人もいれば、「Gulliver」とローマ字で検索する人もいます。
両方ともトラフィックが大きいはずなのに、これまで別個で見ていたのではないでしょうか?
これは大きな機会損失です。なぜなら、表記ごとに分断された検索ボリュームを見ていると、そのキーワードの真の検索需要が見えないからです。
「+」演算子で表記ゆれを合算する
ここで活躍するのが、Googleトレンドの「+」演算子です。使い方は非常にシンプル。複数の表記を「+」でつなぐだけです。
この検索をすると、「おにぎり」と「おむすび」の検索ボリュームを合算したトレンドが表示されます。別々に見ていた時には見えなかった、真の検索ボリュームが可視化されるのです。
通常の「おにぎり おむすび」と検索した場合、両方の単語を含む検索が対象になります。これは検索広告のインテントマッチに近い挙動です。ただし重要なのは、Googleトレンドはスペルミスを含めないという点です。広告のインテントマッチよりも厳密なのです。
マッチタイプ | Googleトレンドでの書き方 | 広告での書き方 |
インテントマッチ | おにぎり ※スペルミスは含まない |
おにぎり ※スペルミスも含む |
フレーズ一致 | “おにぎり” ※スペルミスは含まない |
“おにぎり” ※スペルミスも含む |
完全一致 | – | [おにぎり] ※スペルミスも含む |
OR検索 | おにぎり+おむすび ※スペルミスは含まない |
おにぎり おむすび ※スペルミスも含む |
ダブルクォーテーション = フレーズ一致
「”おにぎり おむすび”」とダブルクォーテーションで囲むと、その語順での検索のみが対象になります。これは広告のフレーズ一致と同じ概念です。ただし、前後に単語がついた検索(例:「美味しいおにぎり おむすび」)も含まれます。
プラス記号 = OR検索(合算)
「おにぎり + おむすび」とプラス記号で繋ぐと、どちらか一方を含む検索が合算されます。これが表記ゆれを網羅する最強の方法です。
完全一致は存在しない
広告では「[おにぎり おむすび]」と角括弧で完全一致を指定できますが、Googleトレンドには完全一致の概念がありません。
注意:除外(-)機能は現在使えない
補足として、Googleトレンドの公式ヘルプには「マイナス記号(-)で特定の単語を除外できる」と記載されています。例えば「おにぎり -おむすび」のように書けば、「おにぎり」を含むが「おむすび」を含まない検索だけを抽出できる、と説明されています。しかし、実際にGoogleトレンドで試してみると、この除外機能は現在動作しません。
最後に
デジタル広告運用において、CVRの変動を正しく理解することは極めて重要です。すべてを運用のせいにするのではなく、3C(Customer・Competitor・Company)で要因を切り分けることで、正確な意思決定ができるようになります。
その中でも、Googleトレンドは「Customer(トレンド要因)」を可視化する強力なツールです。さらに「+」演算子を使えば、これまで見落としていた表記ゆれを合算し、真の検索ボリュームを把握できます。広告運用者として、トレンド要因を正しく把握し、本当に注力すべき運用改善に集中する。それが持続可能で成果の出る広告運用の第一歩です。

Web業界にて20年以上、大手から中堅代理店の顧問を請負。デジタルマーケティングを中心に、主に広告関係の教育や研修、コンペの相談に乗っています。またSEMのお役立ちツールもスクラッチで開発。現在も電通グループの顧問、Shirofuneのアルゴリズム作成補助など担当しており、年間100名以上を教育。皆さまに心から信頼されるパートナーであり続けるために日々研鑽しております。また、世界的権威のある One Voice Awards USA 2025 にも日本人としてノミネートされ、世界的なナレーターとしても活躍中です。